国際文化研究科Graduate School of International Cultural Studies
国際文化専攻 コミュニティ通訳学コース(博士前期課程)
医療、司法、教育、行政、福祉等の領域を実践の場とし、高い言語運用能力と専門的な知識が求められるコミュニティ通訳について、理論と実践の両面から研究することを目的とします。ポルトガル語、スペイン語、中国語、英語をコア言語とし、医療、司法、教育、行政、福祉等の分野をカバーする講義?演習(実務家が一部担当)、外部機関等との連携による通訳実習、人間発達学研究科及び看護学研究科との連携科目等を含むカリキュラムを通して、専門知識を有するコミュニティ通訳者やコミュニティ通訳分野のコーディネーター?研究者を養成します。
設置の趣旨
コミュニティ通訳(Community Interpreting あるいは Public Service Interpreting)は、医療、司法、教育、行政、福祉等の領域で実践され、日本語を母語としない人の基本的人権を保障するために必要な通訳です。
日本で生活する外国籍住民の数は2022年末現在307万人で、この30年間で2.3倍に増えました。愛知県には約28.6万人の外国籍住民が暮らしており、この数は東京都(約59.6万人)に次いで第2位です。役所、病院、学校、警察、雇用相談や法律相談、防犯?防災活動など、様々な場面で多言語対応が求められていますが、多くの外国籍住民にとって、依然として言葉の壁、文化の壁、制度の壁、心の壁は大きいままです。
こうした問題は以前から指摘されていましたが、コミュニティ通訳には、語学力のみならず関連分野の知識や高い倫理観が求められます。その指導ができる人材は限られており、体系的な教育を行っている大学はほとんどありません。
こうした現状をふまえ、本コースは、コミュニティ通訳に関する知識やスキルを体系的に学び、専門性を高めていくことを目的とし設置されています。
どのような人材を育てるか
本コースでは、以下のような人材の育成を目指します。
- 専門性を持つプロフェッショナルなコミュニティ通訳者(医療、司法、教育、行政、福祉等の分野で必要な知識、異文化理解力、通訳者倫理をみにつけた専門家)。
- コミュニティ通訳コーディネーター(専門知識と語学力を持ち、通訳者とユーザーの間を調整し、社会インフラとしてのコミュニティ通訳を効果的に機能させる人)。
- コミュニティ通訳分野における指導者、研究者となる人。
カリキュラムの特長?指導体制
「理論」「実践」「研究者としての能力」の3要素を含み、多文化共生論、現場実務に関する知識、事例研究を含むコミュニティ通訳研究、言語別演習、実務実習、アカデミック?プレゼンテーションに関する科目があります。主な指導言語は日本語、英語、スペイン語、ポルトガル語、中国語です。
人間発達学研究科や看護学研究科の一部科目を履修することも可能です。複数の大学院生と教授陣で構成する「合同ゼミ」において、修士論文(または特定課題研究成果)の執筆にむけた指導を行います。
社会人にも配慮し、夜間、土曜日、オンライン等も活用して指導します。
履修モデル
1年次
- 国際文化研究基礎
- 多文化共生論
- 公益通訳と社会資源
- コミュニティ通訳研究
- 多言語多文化実務論
- 国際文化特殊演習 b
- 他研究科連携科目
2年次
- コミュニティ通訳翻訳演習(言語別)
- コミュニティ通訳実習
- 国際コミュニケーション(言語別)
- 国際文化研究
- 他研究科連携科目
活動紹介
UNHCR 難民映画祭パートナーズ上映「ナディアの誓い」(本校公開講座)への協力。
動画講演(本校公開講座)での、英語から日本語字幕の作成と、日本語から中国語への同時通訳。
日本語でのコミュニケーションに不安を覚える方も参加できるように、AED講習をパナガイドを用いてポルトガル語、中国語、英語に通訳。
多文化共生研究所セミナー『多文化社会と災害』において、パナガイドでウィスパリング通訳(日本語?英語)。
このような人を歓迎します
履修者の声
K. I. さん
国際文化専攻前期課程コミュニティ通訳学コース2023年度入学
ビジネス通訳に携わりながら約10年前から「コミュニティ通訳」者として、またこの分野の研修等も行ってきましたが、本大学院に「コミュニティ通訳」を研究できるコースがあると知り、平日夜間のオンライン授業や、月2回土曜日の授業など遠隔地からの通学も可能と考え、進学を決めました。
オンライン授業での課題提出など、私が大学に在籍していた頃とは全く違うやり方に当初戸惑いましたが、年下の同級生たちにも助けてもらい、大分慣れてきました。
在籍する国際文化専攻前期課程は様々な年代の学生が在籍しており、お互い刺激を受けられることも特色であると感じています。
先生方は熱心に指導してくださることはもちろん、研究に関する情報を提供してくださり、自分一人では知りえなかったことを幅広く学ぶことができます。
「コミュニティ通訳学コース」の特徴として、座学だけでなく実習の時間もあり学外の専門家や先生方の授業を受けることもでき、受け身ではなく双方向の授業が実施されているのが魅力的です。
修了後は、自分の研究で学びまとめたことを今後の通訳の研修等にいかし、社会貢献したいと考えています。
よくある質問(FAQ): コミュニティ通訳学コースについて
Q1.通訳言語としてどのような言語が対象になるのでしょうか。
A1.日本語を軸として、「日本語‐ポルトガル語」「日本語-スペイン語」「日本語-中国語」「日本語-英語」の言語ペアを対象にしています。ただし、これら以外でも社会的ニーズが高い言語については対応可能な場合がありますので、出願の前に本コース担当(学務課?国際文化研究科担当)へご相談ください。ベトナム語やフィリピン語を通訳言語としている方も学んでいます。
Q2.どの程度の語学力が必要ですか。通訳実務経験は必要ですか。
A2.本コースでは、すでに一定水準の語学力を持っていることが前提となります。基軸となる日本語については、日本語を母語としない方は日本語能力試験N1レベル以上が目安となります。英語なら TOEIC860点以上(英検1級)、中国語は中検準1級またはHSK6級(HSKK口試(高級)合格が望ましい)、その他の言語は CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)でB2レベルの語学力が必須です。通訳実務経験に関しては必須ではありません。なお、語学力が上記の水準に達していない方は、出願時の「研究計画書」において「コミュニティ通訳学コース」を選択せず、通常の国際文化専攻で出願することをおすすめします。
Q3.どのような人が学んでいますか。
A3.新卒者(学部から進学してきた人)よりも社会人の方が多く、年齢層も幅広いです。外国出身の方も含まれ、バックグラウンドは様々です。何らかの形でコミュニティ通訳的な活動をしている方、その経験がある方が多く、また愛知県外にお住まいの方も多いです。
Q4.新卒者(学部からの進学者)で通訳経験がなくても大丈夫でしょうか。
A4. 高度な外国語運用能力とコミュニティ通訳に対する強い関心を持ち、実践経験を積みながら将来研究者あるいは実務家を目指したいという意欲がある方はぜひチャレンジしてください。外国語だけできればいいというものではありませんので、コミュニティ通訳に関する書籍や論文などを読んで学問的知識や研究の基礎を勉強しておきましょう。また、医療、司法、行政、教育、福祉など社会の様々な分野に関する一般常識的な知識も必要です。
Q5. 授業はいつ行われますか。対面授業ですか、オンライン授業ですか。
A5.コミュニティ通訳学コースの授業のほとんどは平日夜間のオンライン授業(17時50分~19時20分および19時30分~21時)です。また、隔週で土曜日午後に名古屋駅前のサテライトキャンパスで対面授業が行われます(1年次必修)。一部の科目は昼間開講のため、オンラインのみで修了することはできませんのでご留意ください(週1コマ×15回の授業または集中講義のほか、実習は昼間に実施されます)。前期授業は4月初旬~7月末、後期授業は10月1日~1月末で、9月と2月上旬に集中講義が行われる場合があります。
Q6. 社会人です。仕事が忙しいので 2 年間で修了できるか不安です。
A6. 通常の修業年限は 2 年ですが、社会人院生は「長期履修制度」を利用して 4年間かけて少しずつ単位を取っていくことも可能です。詳しくはこちら →
研究科サポート体制|国際文化研究科|365体育网投|愛知県立大学 (aichi-pu.ac.jp)
Q7.自分の研究テーマについて、あるいは大学院に入ってからの学びなどについて個別に質問や相談をすることはできますか。
A7.国際文化研究科の入試説明会(例年 7 月と 12 月に開催)の時期に、担当教員との個別相談の機会を設けていますのでご利用ください。これ以外の時期でも、メール相談や研究室訪問が可能な場合がありますので、学務課?国際文化研究科担当へご相談ください(研究計画などご提示いただけると助かります)。
Q8.大学を卒業していませんが受験できますか。
A8.大学卒業(日本または外国で学校教育における16年の課程を修了した者)の資格がなくても、本コースに関係する実務経験を十分にお持ちであれば、個別の入学資格審査により受験が認められる場合があります。本学Webページから事前審査書類をダウンロードし、指定期日までに必要書類を提出してください。書類の準備や審査に多少時間がかかりますので、早めに本学?学務課(国際文化研究科担当)にご相談ください。
Q9.入学料、授業料はいくらですか。奨学金制度はありますか。
A9.365体育网投6年度の場合、入学料282,000円、授業料は年額535,800円で、国立大学の標準額と同額です。奨学金については、学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金に申し込むことが可能です(家計所得基準を満たしていることが条件です)。社会人の方は条件によって異なるため、学生支援機構に直接ご確認ください。なお、大学独自の奨学制度もありますが、研究に対する助成(一時金)であり、金額や採択人数も限られています。